腎不全治療とバイオ技術の融合

腎臓の機能が著しく低下してしまう状態を腎不全と言います。
腎不全になった時の治療法の一つが人工透析です。
一般的には週に3回病院へ通い、1回につき4~5時間ほどかけて体内の血液中の過剰物質を除去し、不足している物を補充して再び体内に血液を戻します。
1回の透析には、およそ450リットルの水が必要です。
現在日本では約33万人の人がこの人工透析療法(血液透析)を受けています。
長時間の治療なので患者さんの負担は大きいのですが、この治療があるからこそ、腎不全の患者さんは生きることができるのです。
命をつなぐために週に3回、暑い日も寒い日も台風の日も、患者さんたちは透析に通っています。

バイオ技術は人を守るためにある

人工透析は、半透膜を介して患者さんの血液と透析液を接触させて、血液から余分なナトリウムや水分を除去して、不足している物を補充します。
この半透膜は、人の体に限りなく近い状態にするためにバイオの技術が駆使されています。
一昔前の半透膜は、体に必要な物質まで除去してしまったり除去しなくて良い物まで除去したりと、不都合も多かったです。
そのため、透析をすることによる副作用に悩む人も少なくありませんでした。
透析をすれば命をつなぐことはできても、透析による合併症のため、透析を開始してから10年以上生きるのは難しいと言われていました。
しかし半透膜を、少しでも人の体に近い物にしようと改良を重ねてきました。
その結果、今では20年生存率はおよそ16%くらいまで上がっています。
まだまだ低い数字ですが、透析を開始する年齢が70歳や75歳というケースが多いので、一昔前と比べると大きく進歩していると言えます。
今では、人工透析と同様の原理で、病気の原因となっている特定の物質だけを除去するアフェレシス(除去療法)も行えるようになりました。
アフェレシスでいろいろな難病の治療を行ったり、家族性高コレステロール血症の治療などもできるようになりました。
バイオの技術は、多くの人の命を守っています。

このようなコラボがどんどん増えてくる

バイオの技術は、診断にも使われています。
健康診断を受けると、血液検査の結果にクレアチニンという項目があるでしょう。
これは腎機能のバイオマーカーと呼ばれている検査項目です。
クレアチニンの数値が上昇していれば腎臓の機能が低下しているという証拠なので、臨床でもよく使われている検査です。
しかし、中にはクレアチニンの数値が上昇しないまま、ジワジワと腎機能が低下する慢性腎不全も少なくありません。
クレアチニンではこのような慢性腎不全を拾い上げることができないケースもあるのです。
しかし近年、このクレアチニン以外にも腎機能を的確に調べるバイオマーカーが色々とあることが分かってきました。
尿中L-FABPは日本初のバイオマーカーです。
従来のクレアチニンでは拾い上げることができなかった症例にも、尿中L-FABPは見逃すことなく腎不全の兆候をキャッチできます。
早期の段階で腎不全を発見できれば、人工透析にまでは至らないケースも少なくありません。
人工透析患者さんの医療費は年間1兆5000億円といわれており、医療財政を圧迫しています。
治療だけではなく診断にもバイオの力で貢献し、腎不全を早期に発見できるようになったことは、大きな朗報です。

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